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「ふぐ」のうんちく

てっちり(ふぐ鍋)の歴史

– とらふぐについて。そして、てっちり(ふぐ鍋)の歴史 –

「てっちり」。高級魚ふぐを使用した鍋料理のことを、我々はしばしばそう呼びます。皆さんは「てっちり」の名前の由来、知っていますか?
また、我々が食べるふぐの中でも特に、もっとも高級とされるのが、とらふぐです。皆さん、とらふぐについて、どれだけ知っていますか?

ここでは「てっちり」という料理、そしてその材料となる「とらふぐ」について紹介していきます。


「てっちり」の歴史と今

「てっちり」の発祥は大阪です。そしてその誕生は、昭和中期にまでさかのぼります。もともと江戸時代から食べることを禁じられていたふぐですが、明治ごろからだんだんとふぐ毒に関する解明が進み、昭和30年頃になってようやく、ふぐ食が解禁されたのです。

今では高級魚であるふぐも、当時は庶民が気軽に食べることのできる魚だったと言います。
ふぐ食解禁を機に、大阪では、様々な店で様々なふぐ料理が販売されることになりました。そしてそんなふぐ料理の中でも最も人気だったメニューの1つと言われるのが「ふぐ汁」です。ふぐの「あら」からとれる香りのよい上質なダシ。ぷりぷりとした食感の、ふぐの身。これで人気が出ないわけがありません。さらに、始めはシンプルなものだった「ふぐ汁」が、野菜や豆腐、うどんなど様々な具材が入った料理へと、だんだん進化していきました。
この進化した「ふぐ汁」こそが、後の「ふぐ鍋」つまりは「てっちり」となるのです。

ところで、この「てっちり」という呼び名。何故、「ふぐ鍋」のことを「てっちり」などと呼ぶのでしょうか?
大阪ではもともと、ふぐのことを「鉄砲」と呼んでいたそうです。ご存知の通り、ふぐはテトロドトキシンという毒を持っています。そしてその毒に「当たると死んで」しまう。この「当たると死ぬ」という特徴が鉄砲と似ていることから、ふぐは「鉄砲」またはそれを略した「鉄」と呼ばれました。いかにも大阪らしい、とんちの効いた洒落ですね。
ちなみに、関西地方ではふぐのことを「ふく」と呼ぶこともありますが、これは「福」と発音が同じとなり、縁起が良いからだそうです。
また、関西地方では古くから鍋料理のことを「ちり」と呼んでいたそうです。
ふぐの鍋料理、つまり「てっぽう」の「ちり」。これを略して「てっちり」と呼称していたいたのではないか、という説がどうやら有力なようです。

ここまで「てっちり」の歴史について述べてきました。では、現在の「てっちり」についてはどうでしょう。そもそも「てっちり」はどのように食すものなのでしょうか?

スタンダードな「てっちり」の食し方はこうです。
まず、鍋に張ったお湯に昆布を入れ、ダシを取ります。その後ふぐのあらでダシを取り、具材を入れてから煮ます。具材はふぐの身をはじめ、白菜やしいたけなど様々な種類のものを入れることができます。
具材が煮立ったらそれらを、もみじおろしやネギなどの薬味を入れたポン酢につけて、いただきます。弾力があり淡白で上質な味わい、そしてほんのりとした甘みを持つふぐの身と、このポン酢とが相性抜群です。
そしてシメはやはり雑炊!ご飯を煮て、卵を溶き入れます。ふぐのダシが効いた雑炊は絶品です。

昭和の時代から続く料理「てっちり」。様々な進化を遂げ、本場大阪を中心に、現在でも多くの人に愛されている料理です。皆様も是非食べてみてはいかがでしょうか。その際は、「てっちり」の歴史に少しでも思いを馳せてみるのも、一興かもしれません。


とらふぐのあれこれ

ところで、「てっちり」の材料と言えば、まず思い浮かぶのは何でしょう?やはりふぐですよね。日本で食用に認可されているふぐは22種類いますが、そんなふぐたちの中でも、とらふぐは最も高級かつ美味とされています。ここからは、とらふぐについて「てっちり」と関連付けながら紹介していきます。
天然で採れるとらふぐの旬は、12月から2月の冬の時期です。まさに鍋の時期にぴったりですね。「てっちり」が多くの人に好まれてきたことも頷けます。また冬が旬であることから、カニと並んで「冬の味覚王」と称されることも少なくありません。また従来は天然でしか採れなかったとらふぐですが、研究やそれを基にした改良が進められ、現在では養殖で採れるとらふぐが多く出荷されています。養殖産のとらふぐは安全で美味しく、一年中食べることができます。
また、とらふぐは独特のぷりぷりとした食感と、ほのかな甘みを含んだ旨みを持っています。
さらにとらふぐには、重要な栄養が含まれています。それはコラーゲンです。とらふぐの皮やくちばしには、多くのコラーゲンが含まれています。そしてコラーゲンは摂取することで、肌に潤いが与えられたり、骨が強く保たれたりします。そんな有用な栄養を美味しく摂取するのに、「てっちり」はまさに最適なのではないでしょうか。
しかし、そんなとらふぐに関してただ一つ、心配事があります。それは皆さんもご存知、「ふぐ毒」の存在です。海中で蓄積されるテトロドトキシンという名の毒は、神経や筋肉をマヒさせるとても危険な毒です。場合によっては死に至ることもあります。それゆえに、ふぐを調理するためには、「ふぐ調理免許」という特別な資格が必要とされるのです。現在、毎年数人がふぐ毒で亡くなっていると言います。
しかし、ふぐに関する研究や管理、中毒防止活動は、近年とても進んでいます。以前に比べると、ふぐ毒の被害者の数は、大きく減っているそうです。
近い将来には、ふぐ毒の被害に遭う人が、年間でゼロ人になるかもしれません。
基本的には、ふぐは安全で美味しい魚です。またここでは「てっちり」を挙げましたが、その他の美味しい食し方もたくさん存在します。
「ふぐの王様」とらふぐをはじめとしたふぐたち。「てっちり」をはじめとした様々な料理によって、そのふぐたちの美味しさを最大限に味わってみてはいかがでしょうか?

美味しい「ふぐ」で美味しい「てっちり」を

ここまで、「てっちり」という料理の歴史や名前の由来、そして料理に用いられる魚の中で特に「とらふぐ」について紹介してきました。
ふぐは毒を持つ魚としてよく知られています。しかしその犠牲者は減少の一途をたどっています。
ふぐ調理免許を取得した職人の方々によるふぐ料理を、是非とも堪能してみてはいかがでしょうか。
またその際は、ふぐを最も美味しく食べる方法の一つである「てっちり」を選んでみてくださいね。