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「ふぐ」のうんちく

とらふぐと言えば山口県?大阪府?

– とらふぐと言えば山口県?大阪府?水揚げ1位と消費量1位と部位について。 –

冬になると旬を迎えるふぐの中の王様とも言える存在が「とらふぐ」ですが、とらふぐと言うと山口県の下関が有名です。しかし、水揚げ1位や消費量の1位となると多くの人がイメージしているところとは異なっているかもしれません。そこで、とらふぐの水揚げ1位と消費量の1位を中心に、最近のとらふぐ事情について紹介していきます。


とらふぐの水揚げ1位はどこ?

冬の味覚の王様とも呼ばれているのがとらふぐです。てっさなどと呼ばれるふぐ刺しはもちろん、お鍋のてっちり、唐揚げなど様々な調理方法で楽しめる高級食材です。特に冬が旬と言われる理由としては、身の味というよりも白子が大きく育つのがポイントです。

そんなとらふぐですが、とらふぐと聞いて多くの人がイメージする地域といえば山口県の下関ではないでしょうか。
大きなふぐの置物が有名で一般の人も買い物が楽しめる唐戸市場や、日本で唯一のふぐを専門に取り扱う卸売市場である南風泊(はえどまり)市場も下関にある市場です。
しかし、山口県下関がふぐで有名になったのは水揚量が1位でも消費量が1位だからでもなく、全国で最初にフグ食が解禁になった場所だからなのです。

では、とらふぐの水揚量が全国で1位なのはどこになるのでしょうか。
水産庁ではトラフグ資源管理検討会議というものを行っていて、現在公開されている最新の第4回の資料データによると、県別データで漁獲量1位となっているのは福岡県になります。
公表されているデータは2011年から2016年までのものになりますが、2016年は54トンの水揚げがあり2位の山口県が46トンとなっています。2013年は56トンで山口県の64トンよりも少なかったのですが、それ以外は全ての年で福岡県が上回っており2014年には山口県の38トンに対し71トンと倍近くです。

ちなみに、とらふぐ以外のあらゆるふぐを含めた天然ふぐの水揚量になると、2015年のデータで石川県はシェア率14.1%の691トンとなっています。
福岡県は235トンでシェア率4.8%の全国5位、山口県は317トンでシェア率6.5%の全国4位となっています。この数字からも、他県と比べて福岡県や山口県においてとらふぐの割合がかなり高いということが分かるのではないでしょうか。


とらふぐの消費量1位はどこ?

とらふぐの水揚量1位は山口県ではなく、福岡県というデータがありますが、実際にとらふぐを最も消費しているのはどこの都道府県かご存知でしょうか。
とらふぐに限った話ではないのですが、ふぐの全国消費率において全国1位なのは大阪府なのです。しかもその消費量は他を寄せ付けない圧倒的なもので、全体の6割を大阪府が消費しているとされています。
日本人においてふぐというのはとても身近なもので、縄文時代の貝塚からふぐの骨が見つかっていることからかなり昔から食べられていることが分かっています。
しかし、ふぐというのは毒があることでも有名で、免許を取得した人でないと扱うことが出来ません。毒がありよく当たったから大阪ではふぐを鉄砲と呼び、鉄砲の刺し身だからてっさ、鍋だからてっちりと呼ばれているのです。
今はふぐの毒で命を落とすというのはそうそうありませんが、免許制度のない昔はふぐの毒で命を落とす人も少なくありませんでした。実際、豊臣秀吉は食中毒で倒れる武士を見てふぐ食を禁止したほどです。禁止されたふぐ食が解禁されたのは明治以降の話で、その最初が山口県下関だったために有名になったのですが、実はその解禁前から大阪ではよく流通していたと言われています。そういった文化があるからこそ大阪府ではふぐが身近でよく消費されるのでしょう。特に大阪の黒門市場ではふぐのお店が多数あり、ふぐを立ち食いや店先の簡単なテーブルで食べるなども可能となっています。

また、ふぐの調理には資格が必要ですが、この資格は全ての都道府県で統一されたものではなく都道府県に委ねられています。大阪では東京や山口などのように学科や実技試験などがなく講習会を受けるだけで取得することが可能です。そのため、資格取得者は東京の約5倍、山口県の約14倍と非常に多いのも、ふぐが安く食べられる身近な存在であるという要因としてあげられるでしょう。
簡単に資格取得できるとなると安全性に不安を感じる人もいるかもしれませんが、中毒件数は年1件以下で死亡者0も続いているので他の地域よりも危険ということはありません。


養殖によって1年中楽しめるように

とらふぐは非常に高級な食材なのでなかなか気軽に食べることは出来ないと思っている人も多いですが、たしかに天然のとらふぐは超高級品です。しかし、あくまでも超高級品なのは天然物のとらふぐであって、とらふぐの養殖技術というのは年々向上しており養殖物であれば比較的安価に楽しむことが出来ますし、冬しか食べられないということはなく1年中楽しむことが出来ます。

とらふぐの養殖が本格的に開始されたのは1980年ごろとそれほど古いわけではなく、海上養殖という形で行われています。養殖生産量が最も多いのは長崎県で、熊本県、愛媛県など西日本が中心なのも大阪府の消費量に影響を与えていると考えられているものです。
近年は4,000トンから5,000トン前後を安定して確保できているとらふぐの養殖ですが、海で育てる養殖だけでなく陸上養殖と呼ばれる飼育槽での養殖が増えてきたことがこれだけ安定化した要因でもあります。赤潮や海水温度の変化、台風などの自然災害などの影響を受けにくくなっているのです。

最近では温泉水を利用したとらふぐの養殖というものも行われています。通常の海上養殖では1年半から2年程度出荷までかかるのですが、温泉水養殖の場合年中高活性に保たれるため体重停滞期が訪れず1年で出荷サイズに成長するのです。早く出荷できるだけでなく環境にも良いので、今後も同様の施設が増加すると考えられています。

とらふぐを気軽に楽しめる時代に

とらふぐと言えば市場が大きい山口県の下関や、漁獲量の多い福岡などが有名で、その多くが大阪府で消費されています。とらふぐは高級な食べ物で庶民にはなかなか食べる機会がないと思われがちですが、温泉水を利用した養殖技術の進化などによって広く安価に食べられるようになってきています。養殖技術のさらなる進化で、とらふぐをもっと気軽に楽しめる時代になるでしょう。