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「ふぐ」のうんちく

最高級とらふぐ料理は職人技の極み

– 最高級とらふぐ料理は職人技の極み –

猛毒を持つと知られているにも関わらず、その味から、日本では古くから親しまれているふぐ料理。西日本を中心に広がり、現在では世界にも広がっています。ふぐは毒性や解体の難しさから、取り扱いが難しいと言われ、限られた人しか取り扱いが許されていません。てっさのうす造りなどの職人技も、限られた人しかできない技術なのです。ここでは、そんなふぐや、ふぐ料理について触れてみます。


ふぐの毒はとても危険

ご存知の方も多いかもしれませんが、とらふぐをはじめとして、ふぐの持つ毒はとても危険です。ふぐのお刺身のことを大阪などでは「てっさ」といいますが、当たったら死ぬ=鉄砲。そして、「てっぽう」の「さしみ」ということから、「てっさ」と言われているほどです。

中世の時代には、ふぐの中毒で死んでしまう人が多かったため、ふぐ禁止の例が出たこともあったようです。明治維新後も中毒死の例は相次ぎ、禁止令が出されます。その後、ふぐ毒の研究が進んだことで、内臓を取り除けば大丈夫だということが分かり、解禁されたそうです。毒あると分かっていても、その美味しさには叶わなかったということかもしれません。
養殖物のふぐであれば、毒性は弱いとの主張もあるようなのですが、国からはまだ認められていないとのこと。
ふぐの毒は神経毒のテトロドトキシンといいます。正確に言えば、ヒョウモンダコ、ツムギハゼなどの生き物にもこの毒は含まれています。毒性のあるプランクトンや真正細菌を貝やヒトデなどが食べ、それをさらにふぐが食べることにより、その体内に、毒が蓄積されてしまっているのです。
この毒が厄介なところは、300℃以上に加熱しても、分解されないことにあります。熱しているから大丈夫だとは限らないのです。
ヒトが口から摂取してしまいますと、1~2mgで死に至ると言われています。その毒性は青酸カリの約850倍にあたるようです。致死量を口にしてしまうと、20分ほどで麻痺症状が出ると言われ、発症後24時間以内に死亡する確率が高いそうです。解毒方法が見つかっていないため、毒を摂取しないか、その後適切な人工呼吸方法などを行うくらいしか、対処法がないようです。
ふぐの毒性は特に卵巣や肝臓などに多く含まれているとされています。例外として、「ふぐの卵巣の糠漬け」などの郷土料理として食べることもありますが、そうした加工作業にもふぐ調理師などの資格者しか当たることができません。無資格者による加工作業によって、食中毒が起こった例もあります。
そうしたことから、ふぐの毒は、適切に取り除く技術が必要になります。


ふぐの取り扱いは免許制

ふぐとひとくくりで言ってしまいましたが、ふぐにも350種類以上があります。有名なふぐと言えば、食用ふぐの中で最高級の「とらふぐ」や揚げ物に使われる「しろさばふぐ」などがいるでしょうか。どちらも、肉、皮、精巣まで食べることができるふぐです。
ただ、ふぐは種類も多く、それぞれ食べられる部位や毒のある位置など異なるため、ふぐを食用に調理したり、お店で提供する場合には、ふぐ調理師免許の資格が必要となります。ふぐ調理師免許を有していると、ふぐに関する適切な知識や、調理技術があるという証明になるためです。
逆に言えば、この資格を持っていない人以外は、ふぐを調理したり提供したりすることができない、という業務独占資格となっています。ただ、国家資格ではないため、各自治体の裁量によって、試験内容や定められる範囲も異なっているようです。試験がなく講習のみでふぐ調理師の免許が取れる自治体もあります。
いずれにしても、調理師免許を有しており、実務経験が前提となっているようです。
また、自治体によっては、ふぐ加工製品取り扱い届出済証登録を出していれば、「身欠きふぐ」と言う、除毒作業が済んだ状態で販売されているふぐであれば、取り扱いができるところもあるようです。
ふぐは、専門の資格があるほど細心の取り扱いを必要とする食材です。そのためふぐ調理師の資格は、一流料亭や寿司屋などでは重宝されるでしょう。


手間と職人技のふぐ料理

ふぐを食べられるようにするには、多くの手順を踏まなくてはなりません。普通の魚であれば、三枚おろしで解体することができますが、ふぐには毒がありますのでそのままでは食べることができません。

そのため、まず「身欠き」と言ってふぐの毒性のある部分を取り除く作業が必要です。また、ふぐは体表に棘を持っているため、皮から棘を外す作業もあります。
身欠きの手順は、まずふぐの口先、次に背びれや胸びれなどを切り落としていきます。その後、ふぐの皮を剝いでいき、最後に内臓を取りだして、身の部分を洗えば完了です。
その後、身を三枚におろします。その手順のことを、磨きと呼ぶこともあるようです。
このように手順を踏んで初めてふぐは、食べられるようになります。
さらに、ふぐのお刺身「てっさ」は、しめてから、布をかぶせて1日から2日寝かせるひと手間が加わります。普通の魚の刺身の場合には、死後硬直後、身がしまっている数時間以内に食べることがすすめられますが、ふぐは元々弾力性のある肉を持っているため、熟成させると美味しく食べられるようになるためです。
ふぐのお刺身は、透けるほど薄い身が特徴的ですが、そこにもしっかりと訳があります。ふぐ肉は繊維でできており、とても弾力が強いのです。他の魚と同じような厚さで切って、刺身にしたのでは、噛み切るのが難しいとのこと。そのため、身を包丁で細く引いて、透けてみえるほどの薄い切り身にします。この薄切りに、熟練した職人技が光るのです。
ふぐ刺しの一般的な盛り付け方には、大き目の平たい丸皿に、刺身を円盤状にして敷きつめる「べた盛り」があります。その他、盛り方の妙として、見た目でも楽しめる盛りつけを行っている料亭などもあるようです。有名なお造りですと、「鶴盛り」や「孔雀盛り」、「菊盛」など、それぞれ工夫を凝らした盛り方があります。
専門的な知識と技術、そしてうす造りなどの職人技によってふぐ料理は提供されています。この頃は、動画などでふぐ職人のふぐさばきの技が公開されており、海外からも注目を集めているようです。

ふぐ料理は知識と技術の合わせ技

ふぐ料理を作るためには、ふぐの解体に手間もかかり、専門的な知識も必要です。そのため選ばれた人しか調理にあたることのできません。ふぐはその毒性から、取り扱いに細心の注意を払う必要があるためです。資格に裏付けされたふぐの知識や取り扱い技術と、磨き上げられた職人技によって、ふぐ料理は作られています。特にてっさなどでは、職人技の妙を見ることができるでしょう。