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「くえ」のうんちく

「くえ」のうんちく

– 「くえ」のうんちく –

幻の魚

関東では馴染みの少ない魚のひとつとして「くえ」が挙げられます。西日本から東シナ海、南シナ海の沿岸域に分布するくえは、成魚は全長60cmほどですが、稀に全長1.3m・体重30kgに達する大型個体が漁獲されます。日本産ハタ類としてはタマカイに次ぎマハタ、コクハンアラ、カスリハタ、オオスジハタなどと並ぶ大型種で、釣り人の憧れの的ともなっています。昼間のくえは、じっと巣の岩場に隠れて動きませんので、漁は深夜に行います。また、くえは餌をなかなか食べないことで有名です。たまにしか餌を食べないことから、たとえプロの釣人でも、クエを釣り上げることはとても難しいのです。


最初は全部メス

くえは雌性先熟(しせいせんじゅく)という、生まれてから性転換を行う特殊な生態を持っています。雌性先熟とは、生まれた瞬間は全てメスで、繁殖を終えた後にオスになるという生態のことです。縄張りと雌を巡って雄同士が激しく争うため、体の小さい雄は縄張りをもてず繁殖の機会を得にくくなります。そのため一生のうちに自分の子孫をより多く残すために、小さいうちは雌として繁殖を行い、縄張りを持てる大きさになったらより効率よく自分の子孫を残せる雄に性転換します。つまり、大きい個体は全てオスということになります。ハタ科のくえの他には、ベラ科やブダイ科にも見られます。


冬が旬

大きい個体は夏でも美味しいのですが、普段は深海に生息しています。そして産卵の冬の時期に、水深50m程度まであがってきます。繁殖後に餌を多く食べるため、冬の時期が一番美味しいと言われています。ちなみにくえは、肉食性で岩礁域にすむ魚類やイカなどを丸飲みにし、食べた途端すぐに巣に帰ってしまいます。
刺身や鍋料理(和歌山で「クエ鍋」、福岡で「アラ鍋」)などの高級食材として食されています。厚い皮下脂肪があるが味は淡白で、「大きくて見かけが悪いのに美味な魚」の例としてよく挙げられます。また「クエ食ったら他の魚食えん」など、「くえ」を使った語呂が多く見られるほど、西日本では愛されている食材のひとつです。