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「ふぐ」のうんちく

「ふぐ」の生態(2)

– 知られざるふぐの生態や、毒を持つ理由 –

カニやエビ、ウニなどと並ぶ海の美味として珍重されるふぐですが、毒があるということ以外の生態はほとんど一般に知られていません。ふぐについて深く知ることで、ふぐ料理をつつきながらの話にも花が咲きます。また生態や習性、毒のある理由がわかれば、今までとはまったく違った目線でふぐ料理を楽しむことができるでしょう。


ふぐの一生

ふぐは「河豚」とも表記され、日本では古来から高級魚としてその美味が親しまれてきた魚です。ふぐの名前の由来は諸説ありますが、「袋」や「ふくらはぎ」のように丸っこいものを「ふく」と呼ぶ習わしがあったため、丸くユーモラスな姿のふぐがそう呼ばれるようになったとも言われます。

ふぐは「河豚」とも表記され、日本では古来から高級魚としてその美味が親しまれてきた魚です。ふぐの名前の由来は諸説ありますが、「袋」や「ふくらはぎ」のように丸っこいものを「ふく」と呼ぶ習わしがあったため、丸くユーモラスな姿のふぐがそう呼ばれるようになったとも言われています。
ふぐは種類によっては淡水に生息する魚ですが、汽水や海水にも分布するため、その生活は長い間謎に包まれてきました。しかし研究が進むにつれ、ふぐの一生の大半は明らかになっています。

ふぐはその丸い身体のフォルムと小さなヒレから、生まれ育った近海だけを泳ぐと考えられがちです。実際にはふぐの移動範囲は非常に広大で、生まれた場所から何百キロもの距離を泳ぎまわることがわかっています。
ふぐの一生は産卵された場所ではじまり、生後しばらくはその産卵場の近場でエサをとりながら成長していくのです。体長が10センチほどになり、身体がしっかりと出来てきたら徐々に沖合に移動して、より多くのエサをとって食べるようになります。
ふぐのエサとなるのは主に動物性のプランクトンや藻類ですが、種類によっては貝類や甲殻類を食べてしまうものもいて、食性は豊富です。貝を食べる種類は、硬い甲羅や貝殻を食い破るために歯が発達しています。産卵のために故郷に帰ってくる習性をもつ種類もおり、相手を探して浅瀬に卵を産み、子孫を残していくのです。サケなどの魚は産卵後に力を使い果たして死んでしまいますが、ふぐは産卵後もまた沖合に戻って生活を続けます。寿命はトラフグなどの場合10年ほどと言われており、長命な部類の魚だと言えるでしょう。


トラフグの変わった生態

食用にされるふぐのなかでも、高級魚として日本でも馴染みが深いのがトラフグです。食べる機会が多いわりに、このトラフグの不思議な生態はあまり知られていません。
まず挙げられるのが、魚の中では珍しい産卵回帰性です。これはサケなど一部の魚にしか見られない習性で、必ず自分が生まれた場所の近くまで戻って卵を産むという動きになります。これを利用して、トラフグの漁獲量を安定させるために卵を近海に設置するなどの取り組みも行われており、将来もっと安くふぐ料理を楽しめる日が来るかもしれません。
また、潜砂行動もトラフグなどのふぐ全般に見られるユニークな習性です。この行動はその名が示す通り、海底の砂をかきだしてそこに深く潜り込み、身を隠すという動きになります。
ふぐは猛毒があるため非常に強いというイメージがありますが、実際にはとても臆病な魚です。エサを探していたり、生活域を変えるために移動する以外は多くの時間、砂に潜って敵から身を隠そうとしています。ちなみに、ふぐのしっかりとした食感は生態とも大きく関わっているものです。

トラフグに代表されるように身体が丸っこく、ヒレが小さいふぐは決して早く泳ぐのには向いていません。しかしその分小回りが利き、急旋回や水中の一点に留まることは得意なため、岩についた藻類をつついたりするのに向いています。そんな身体ながらふぐは回遊魚でもあるため、移動距離はとても長くエサを求めて数百キロを泳ぐのです。その長距離移動でついた筋肉があのコリコリとした食感につながっており、美味しさの元ともなっています。仮にふぐが近海だけを泳ぐ魚として進化していれば、食用魚としての価値はもっと低かったでしょう。有毒なことも考え合わせると、食用になっていなかった可能性もあります。


ふぐを知って美味しく食べる

ふぐは北海道を除く日本のどこでも獲れるうえ、昔から日本人に親しまれていた魚です。毒を持っているのはふぐなりの生き抜いていく知恵であり、決して悪者というわけではありません。どんな習性があって何を食べているのか、生態について知ればふぐを見る目も変わり、これまで以上にふぐ料理を美味しく食べることができるでしょう。