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「ふぐ」のうんちく

「ふぐ」の生態(1)

– 日本で見られる主なふぐの種類 –

高級食材として愛されている「ふぐ」。「『てっちり」』と呼ばれる鍋や、「『てっさ」』と呼ばれる刺身は特に有名です。ふぐは名前の通りフグ目フグ科に分類される魚類の総称で、日本に生息するふぐは全体で53種類のふぐが存在します。海水だけでなく淡水で生きる種類もいますが、そのほとんどが体内に毒を持っています。
今回は日本に生息するふぐの種類をいくつかご紹介します。食用・観賞用と幅広く活躍するふぐの魅力にぜひ触れて下さい。


「とらふぐ」について

料理に使われるふぐは主にトラフグ属のふぐですが、その中でも最も知名度の高いのが「とらふぐ」です。ふぐ鍋や刺身など、一般的にイメージされるふぐ料理は主に「とらふぐ」を材料にしており最も高価なふぐでもあります。

「とらふぐ」は漢字で「『虎河豚」』と書きますが、実はその名の由来はまったくの不明です。和歌山県や神奈川県で呼ばれてい

た名前がもとになっていることだけがわかっていますが、体の模様も虎柄ではないので模様が由来というわけではありません。

それ以外にも、「とらふぐ」は日本各地に様々な呼び名を持っています。よく知られている通称としては、縁起を担ぐために濁点を抜いた下関市の「『ふく」』、あたったら死ぬというしゃれから生まれた大阪の「『てっぽう」』、死を覚悟して食べるほどおいしい、というしゃれから棺桶を意味する福岡の「『がんば」』などがあります。

「とらふぐ」は春から初夏にかけて産卵を行い、最終的に成魚は体長はが70センチほど大きくなります。肉食で鋭い歯を両あごに持っており、小魚や貝・甲殻類などを好んで食べます。生息域は、南は九州から北は北海道までと幅広く分布し、最もよく獲れるのは山口県の下関市で、九州でも多く水揚げされています。しかし天然物は年々収穫量が減っていて非常に高価なために近年は養殖も盛んです。
フグ科の魚は毒があるのが有名です。「とらふぐ」も卵巣と肝臓に強い毒を持っていますが、精巣(白子)には毒はなく高級珍味として好まれています。きちんと訓練したプロの免許を持った料理人がさばくのが一般的で、素人がさばくと危険なので決して行ってはいけません

「とらふぐ」は高級料理として好まれていますが、その理由は淡白で飽きのこない味だけでなく栄養素が豊富に含まれているからです。「ふぐ」はカリウムを多く含む反面、ほとんど脂肪がなくて低カロリーです。また、骨・皮の周囲にはゼリー状のゼラチンがあるので女性に好まれるコラーゲンもたっぷり含まれています。


トラフグ科に属する主な食用のふぐ達

「しまふぐ」はフグ目フグ属トラフグ科の「ふぐ」の仲間です。「とらふぐ」の名前の由来は不明ですが、「しまふぐ」の名前は背中に縞模様があるのが由来です。はっきりとした体の模様だけでなく、胸びれから尾びれまで、すべてのひれが鮮やかな黄色をしているのも特徴で見つけやすい「ふぐ」です。

「しまふぐ」は青森から九州まで日本各地の幅広いところに生息し、肉食で軟体動物や甲殻類を餌としています。体長は45センチから最大で70センチにまで成長するほど大きめの「ふぐ」で、食用として流通していますが、「とらふぐ」と同じように卵巣と肝臓に毒があります。そのためこちらもプロの免許を持った料理人に料理してもらうのが一般的ですいます。

「しまふぐ」の値段はとらふぐやその他のふぐより安く、料理用ふぐの中では最も手に入りやすいとも言われています。料理のメニューとしては唐揚げや刺身にして食べることが多く、「とらふぐ」が高級料理であることに対して、お惣菜的なメニューが多く見られる庶民的なふぐです。

「とらふぐ」によく似た「ふぐ」として、代用として食べられていたのが「からすふぐ」です。「からすふぐ」は「『カラス」』とも呼ばれ、体が全体的に黒いことからその名前がつきました。「とらふぐ」や「しまふぐ」と同じトラフグ科で主に東シナ海に生息していて、こちらも卵巣と肝臓に強い毒を持っていますので、素人がさばくのは非常に危険です。

「からすふぐ」の体長は50センチ前後と「とらふぐ」よりも小さく、味も「とらふぐ」より劣ります。しかし、高価な「とらふぐ」よりも値段が安いため、以前は料理用として市場に多く出回り非常に重宝された「ふぐ」でした。しかし近年では乱獲したために収穫数も大幅に減少し、2014年には絶滅危惧種に指定されています。


モヨウフグ科に属する観賞用のふぐ達

ふぐの種類の中でも珍しい種類だと言われるのが、モヨウフグ科に属するふぐ達です。モヨウフグ科の「ふぐ」は食用ではなく主に観賞用として飼われることが多く、「もようふぐ」や、「すじもようふぐ」などがよく知られています。

「もようふぐ」は琉球列島をはじめとして、九州から新潟県にかけて幅広く生息している「ふぐ」です。体長は90センチになるほど大きい種類ですが、雑食性でサンゴ礁や岩礁付近で泳いでいるのがよく確認されています。
「もようふぐ」の幼魚は体の色が鮮やかなオレンジ色になっていて、お腹のあたりに豹のような縞模様があり、これが名前の由来だと言われています。成魚になるにつれて体の色が変化していき、最終的には白、または白みを帯びた薄い灰色へと変わっていきます。成魚になると体の表面に黒い斑点のような細かい模様が表れ、肛門のあたりは黒っぽくなっていることが多いのも特徴です。
「もようふぐ」は卵巣に強い毒があり、多くの都道府県では食用として認めていませんので食べることは決しておすすめしませんてはいけません。一方、幼魚は体がとても鮮やかな色をしているので観賞用として飼われることもあります。

「すじもようふぐ」は琉球列島を中心に生息しているふぐで、それ以上北ではほとんど見かけない珍しい種類です。体の色地は茶色や黄色がかった褐色で体長は45センチほどと小さく、「もようふぐ」ほどおおきく大きくはなりません。背中からお腹にかけて縦の縞模様を持っているのが「『すじもよう」』の名前の由来です。
「すじもようふぐ」も内蔵に強い毒があるので、食用には指定されていません。その一方で、近年では飼育用として好まれ愛好家も多く存在します。おっとりとした優しい性格のふぐなので、飼育する時は気性の荒い魚や同じ種類と一緒の水槽に入れず、温かい水温をキープして育てるようにしましょう。また、食欲旺盛なため餌代がかかるので注意して下さい。”

料理から鑑賞まで色々なふぐの魅力に触れよう!

「ふぐ」は毒のある魚として恐れられている一方で、高級食材として多くの人に好まれている魚です。それだけではなく、ふぐの種類によっては観賞用としても広く愛されています。
料理に舌鼓を打つのはもちろんのこと、「ふぐ」の珍しい模様や愛らしい動き、性格など飼育することでわかる魅力もあります。「ふぐ」の種類は日本各地に最も多く生息していますので、ぜひ注目してみて下さい。