– とらふぐはどの部分が食べられる?食べることができるふぐの種類と部位について。 –
ふぐ刺しやふぐ鍋などに代表されるふぐ料理。もちろんお値段は張りますが、一度は食べてみたい一品です。ふぐのなかでも一番の高級魚とされているのがとらふぐです。養殖技術が発展している現在でも、天然物はむしろますます高価になっています。
とらふぐ以外にも、ふぐにはいろいろな種類があります。種類によって食べられる部位も違うので、その点にも注目してみましょう。
日本で食べられるふぐの種類
ふぐはおよそ120種類に分類できると言われていますが、食べることができるのはその中でも僅かです。日本では食用として22種類が許可されています。ふぐは非常においしい魚ということで有名ですが、同じく毒を持つ魚であるという点も気を付けておきたいところです。
ふぐの厄介な点は、種類によって毒を持っている部分が異なるという点。食べられる種類が少ないことから分かるように、食用部位が全くない種類も存在するのですが、素人では判断できないことが多いのです。同じ種類であっても個体差があったり、生息海域や季節によって違いがあることもあります。実際に、日本の食中毒は、きのことふぐがその原因の大半を占めています。
そのため設けられているのがふぐ調理師免許です。国家資格ではないものの、都道府県が設置しているふぐ条例に基づいて定められています。この免許を持っていないとふぐを調理することはできないのです。
ふぐは白身魚の代表的な魚ですが、他の白身魚と比べると圧倒的に脂肪の数値が低いと言う特徴があります。タンパク質やカロリーも低く、ヘルシーです。一方で、ふぐ肉は他の魚と牛肉の中間に位置する肉である、と言われることがあります。ふぐの肉はそれだけ繊維が強いため柔らかさを感じにくいという特徴があり、だからこそ刺身で食べる時は、絵皿の絵が空けるほどに薄く切らなければならないのです。
ふぐの王様とらふぐ
ふぐの中でも最も高級で美味しいといわれているのがとらふぐです。そこから「ふぐの王様」やカニと並ぶ「冬の味覚王」と呼ばれることもあります。
全長は70センチほどで、特に大きくなる種類です。大きく白く縁どられた黒斑点と、それに続く黒斑点が見た目の大きな特徴です。生き物としてのとらふぐに注目してみると、歯と体に非常に大きな特徴があります。まず歯は非常に丈夫な作りになっていて、仲間の体を傷付けたり、飼育網を破ったりすることもあるほどです。この歯を持っていたからこそ、とらふぐは長い間養殖が難しいと言われていたのです。また、ふぐと言えば体を丸く膨らませることでもおなじみですが、とらふぐの体も膨れます。これは外から強い刺激を受けたときに防御や威嚇のために行っていると言われています。
高級、美味と並んで有名なのが、猛毒を持っているという特徴です。とらふぐは肝臓と卵巣にテトロドトキシンという猛毒を持っており、腸にも弱い毒が含まれています。「ふぐ毒」といえばテトロドトキシンのことを指し、1ミリグラムでマウス1万匹を殺すことができると言われています。甘く見て素人がふぐ料理に手を出すことがいかに危険か、よく理解しておかなければなりません。一方で皮膚や精巣、肉は無毒なので、その独特の食感と旨みを楽しむことができます。
養殖のとらふぐは1年を通して食べることができます。鍋料理というイメージが強い魚ですが、夏場にぶつ切りやたたきにして食べても美味しいです。一方で天然物の旬は12月から2月の冬。ふぐちり鍋や刺身、カラ揚げの他、白子のポン酢和えなどが定番料理です。ひれを網で十分に焼き、そこに熱燗を注いだふくひれ酒も人気のメニューです。養殖技術が進化したおかげで一般的なお店でも食べることができるようになった一方、漁獲量の減少により天然物は価格が高騰しています。
その他のふぐの種類は?
とらふぐ以外には、どのような種類が食べられているのでしょうか?
とらふぐに次いで有名なのが、まふぐです。山口県萩市のものがとくに有名で、「ふぐの王様」と呼ばれるとらふぐに対し「ふぐの女王」と呼ばれブランド化しています。まふぐは体にとげがなく、褐色です。胸びれの黒い斑点があるか、その斑点は白輪で覆われていないか、尻びれが黄色か、という部分がまふぐを見分けるポイントになります。身がとらふぐに比べて柔らかいものの、庶民的な価格でたべられるふぐとして親しまれています。まふぐは毒を持つ部位が多く、卵巣や肝臓だけではなく、皮膚にも毒を持っています。
しまふぐも有名な種類です。ふぐの養殖が広がるまでは、安価なことも手伝って広く食べられていました。名前の通り背中と体側に白い線が走っていて、ひれは全て鮮やかな黄色をしています。皮が厚くとげがするどいので、ふぐ提灯に最も適した種類であると言われています。肝臓と卵巣に強毒、腸に弱い毒を持っています。精巣と皮、肉が可食部位です。
とらふぐと見た目が似ている種類に、カラスふぐがあります。尻びれが黒いかどうかで見分けることが可能です。その名の通り背中が全体的に黒いという特徴があります。とらふぐには劣るものの非常に美味しく、安価で食べられることから乱獲され、2014年には国際自然連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定されています。法的拘束力はないものの、保護策の強化などが叫ばれている種類です。肝臓と卵巣には強い毒がありますが、肉と皮、精巣は食べることができます。
ショウサイふぐは、全身にとげをもっていない種類になります。ふぐの中では安価な種類で、秋から春にかけて旬を迎えます。体側に鮮やかな黄色い線が走っています。昔から関東で鍋物として食べられてきたふぐで、江戸時代の俳句や川柳にしばしば登場する「ふくとう汁」はショウサイふぐを使ったみそ汁のことだと言われています。卵巣と肝臓だけではなく、皮にも強毒が含まれています。肉と精巣を食べることができます。内湾で簡単に釣れるので釣のターゲットとしても親しまれていますが、それだけに素人料理で中毒を起こした例もある種類です。
ふぐ料理を楽しもう!高級なイメージが強いふぐですが、最近は養殖技術の向上によって、1年を通して比較的安価な値段で食べられるようになってきました。ふぐの王様とらふぐにも手が届くようになっているので、その美味しさを堪能するのはいかがでしょうか。 |